
- 6月30日
精神科の包括ケアとは
包括ケアとは、医学的な治療だけでなく、心理的なケアや社会的なサポートなど、色々な方法をつつみこんだパッケージです。 心には色々なことが影響します。 人間関係、お金、個人の考え方、脳の構造やホルモンバランスなど様々なことです。 そして、精神疾患も、生物学的、心理学的、社会的な要因が組み合わさって作られるという、生物-心理-社会モデルという考え方が一般的です。 だから、心を治すための治療プランも、いくつか組み合わせる方が良いということになります。そこで、たくさんの治療やケア、サポートを包み込んだパッケージとして、包括ケアというアプローチが注目されています。 例えば、お薬の治療を受けながら、お金や仕事などの社会的な部分をサポートしたり、心理士によるカウンセリングを受けたりして、患者さんの生活・人生を多面的に支えることを包括ケアと呼びます。 家の近くの福祉施設や民間サービスを利用する地域ケアと包括ケアを併せて、地域包括ケアと呼ぶこともあります。 今まで包括ケアまたは地域包括ケアという言葉は高齢者福祉の話題に使われることが多かったのですが、本当はもっと広い

- 6月25日
WHOの精神医療に対する報告書について
世界保健機関(WHO)が、2022年6月に精神医療・精神保健福祉(心の健康のケア)を変えるべきだと提言する報告書を発表しました。 https://www.who.int/news-room/releases/17-06-2022-who-highlights-urgent-need-to-transform-mental-health-and-mental-health-care 日本でも、今、精神医療をどう変えていくか、医療保護入院というシステムをどうするかといった社会的な議論がありますが、こうした話は日本に限ったことではなく、世界的な課題です。 今回は、このWHOのレポートを私の視点でざっくりまとめてみました。 精神疾患というと、珍しい病気と思われる方もいるかもしれません。しかし、WHOの報告書いわく、世界では8人に1人が精神疾患を抱えるという数字が出ています。実は、精神疾患はありふれたもので、誰もが精神疾患になる可能性があります。なお、精神疾患の中では、不安症(不安障害)とうつ病が最も多いです。 精神疾患は社会と密接に関係しています。国の経

- 6月23日
日曜日心理カウンセリング予約状況
平素よりお世話になっております。 令和4年6月より新たに女性の心理士が赴任され、日曜日も心理カウンセリングが可能となりました。臨床心理士および公認心理師の有資格者で、通常の心理カウンセリングの他、認知行動療法やスキーマ療法などのスキルもある先生です。 心理カウンセリングはどの方法でも1回50分となります。日曜日は、まだ予約に空きがある状況です。ご希望の方は、主治医や事務、看護師にお申し付け下さい。なお、心理カウンセリングのみご希望の方も、最初は医師の診察が必要ですので、当院予約サイトでご予約をお取り下さい。 日曜日は9:30-12:30の時間帯で医師も勤務しております。日曜日の医師は交代制ではありますが、精神科医としての診療や、睡眠薬や向精神薬の処方が可能です。心理カウンセリングに合わせて、日曜日に処方をもらうことも可能ですので、ご希望の際は受付にお伝え下さい。
- 6月6日
精神保健福祉士について
平素よりお世話になっております。 8月より当院に精神保健福祉士(PSW:精神科ソーシャルワーカー)が赴任することになりました。精神保健福祉士は福祉制度のエキスパートです。 精神疾患をお持ちの方に対する福祉制度・福祉サービスは、とても沢山あります。必ずしも役所/公的機関だけでなく、民間企業も参入しているので、福祉系の事業所は沢山あります。しかし、あまりに沢山あり過ぎて、分かりにくくなっており、利用しにくくなっています。 精神保健福祉士は、こうした複雑な福祉制度・福祉サービスを皆様に紹介する役割を担います。ご利用は予約制になりますので、ご希望の方は主治医に仰って下さい。

- 6月1日
治療抵抗性うつ病の割合
治療抵抗性うつ病とは、うつ病の中でも治りにくい場合を指します。定義は研究によっても異なりますが、2種類以上の抗うつ薬を使っても良くならない場合は、治療抵抗性うつ病と捉えて下さい。今回は、治療抵抗性うつ病がどのくらいの割合で存在するのか調べたアメリカの疫学研究を紹介しますが、ここでの治療抵抗性うつ病の定義も、最低2種類の抗うつ薬を使っても改善がない場合とされています。 紹介する研究論文:Epidemiology of Treatment-Resistant Depression in the United States. J Clin Psychiatry. 2021. この研究では、18歳以上の治療抵抗性うつ病の割合を調べています。うつ病の患者さんの中で、治療抵抗性うつ病の割合を、2つのデータベースを使って調べたところ、1つが6.8%、もう1つが5.8%となりました。互いに近い数字であり、再現性は高いです。 では、どのような人が治療抵抗性うつ病になりやすいのでしょうか? この研究ではそれも調べています。その結果、女性、中年(45-64歳)、白人の