抗不安薬・睡眠薬をやめたい

最終更新: 5月21日

ベンゾジアゼピン系の抗不安薬・睡眠薬に依存してやめられない場合について話します。


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抗不安薬とは不安を取る薬ですが、不安の治療薬にはいくつか種類があります。よく使われるのが、即効性のあるベンゾジアゼピン系の抗不安薬で、アルプラゾラム、ロラゼパムなど色々とあります。ベンゾジアゼピンには睡眠薬もあります。ブロチゾラム、フルニトラゼパムなどで、これもよく使われています。しかし、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬や睡眠薬は長期間使っているとなかなかやめられないものです。ここでは、ベンゾジアゼピンの副作用や減らす方法、中止する方法について説明します。


ベンゾジアゼピンとは


ベンゾジアゼピン(benzodiazepine)とは脳に作用する向精神薬の一種です。ベンゾ(benzo)などとも略され、不安を取るタイプと、睡眠を促すタイプに大別されます。筋肉の緊張をとったり、てんかん(意識を失ったり、けいれんしたりする症状)を止める作用もあります。即効性があり、便利な薬ではあるのですが、副作用の問題があり、使用について注意が必要です。


ベンゾジアゼピン依存

ベンゾジアゼピン系の抗不安薬や睡眠薬の副作用でよく問題になるのが、依存性です。依存性は長期連用で出現します。ベンゾジアゼピンを1ヶ月以上使用すると依存性のリスクが生じます。ベンゾジアゼピンにはアルコールと同程度の依存性があり、やめたくてもやめられない状態になることがあるのです。


薬に依存すると、薬が切れた時に「また薬が欲しい」と思うようになります。このように気持ちの面で依存してしまい、なかなかやめられなくなることを精神的依存と言います。そのほかに身体的依存というものも生じます。身体的依存とは、体が薬に依存してしまい、薬を急に中断すると体に症状が現れる状態のことです。これを離脱症状と呼びます。


ベンゾジアゼピンの離脱症状


長く使っていたベンゾジアゼピンを急にやめると離脱症状が出ます。ベンゾジアゼピンの離脱症状は色々とあります。例えば、不安、イライラ、不眠、動悸(心臓の鼓動が早くなる)、発汗、頭痛、震え、筋肉の痛み、めまい、吐き気などです。記憶力や集中力が落ちることもあります。ひどいと錯乱状態になったり、全身けいれんを起こしたりして、生命の危険が生じることもあります。ですから、ベンゾジアゼピンを長く使っている人は、急にやめてはいけません。やめる場合は、離脱症状が出ないように少しずつ減らしていきます。


ベンゾジアゼピンに依存しないために


ベンゾジアゼピンに依存しないためには、短期間の使用にとどめることが大切です。文献には3-4週間以上毎日使い続けると依存が生じると書かれています。なるべく1ヶ月以上使わないことが大切です。もしも、不安症状や不眠が何ヶ月も続くような病状であれば、SSRIやSNRIなどのベンゾジアゼピン以外の薬で治療を始める方が良いと言われています。この場合、SSRIやSNRIと一緒にベンゾジアゼピンを使うこともありますが、ベンゾジアゼピンの方はあくまで短期間だけ補助的に使われます。

また、ベンゾジアゼピンの用量も依存性に関係します。ベンゾジアゼピンはジアゼパム換算というもので量を評価します。ジアゼパム換算とは、あるベンゾジアゼピンの薬がジアゼパムという代表的なベンゾジアゼピンの薬に換算すると何mgに相当するのか計算する方法です。例えば、ベンゾジアゼピンの一種であるアルプラゾラムの1.6mgという量は、ジアゼパムの10mgに相当します。


ジアゼパム換算で10mg以上のベンゾジアゼピンを使用すると依存しやすいと言われます。つまり、ベンゾジアゼピンを大量に使わないことも大事なのです。


その他の副作用

ベンゾジアゼピンの副作用は依存性だけではありません。眠気怠さなどの副作用も多いです。居眠り運転で交通事故を引き起こリスクもあるので、基本的に運転前に内服してはいけません。


また、集中力や記憶力の低下といった認知機能障害という副作用があり、例えば仕事のミスが増える可能性があります。特に、高齢者は認知機能障害の副作用が出やすく、認知症に似た状態になることもあります。基本的に高齢な方はベンゾジアゼピンの使用を控えたほうが良いでしょう。


ベンゾジアゼピンには自分を抑えられなくなる脱抑制という副作用もあり、衝動的になってしまいます。元々自分をコントロールするのが苦手な人の場合、衝動的に自分を傷つけたり、薬を沢山飲んだりしてしまうこともあるため注意が必要です。また、寝る前にベンゾジアゼピンを使うと過食してしまい、そのことを覚えていないという症状が出ることもあります(睡眠関連摂食障害)。

筋肉の緊張を取る作用が悪影響をもたらすこともあります。お年寄りだと、体の力が入りにくくなり、転倒のリスクが高まります。骨が脆い方だと、転んで骨折してしまうこともあります。 こうした害があるため、できれば必要最低限の使用にとどめたいところですが、日本ではベンゾジアゼピンが大量に処方されやすく、また、長らく漫然と処方されてしまうことが多いです。こうならないためにも、主治医と副作用について相談することが大切です。


ベンゾジアゼピンをやめる方法


ベンゾジアゼピンをやめたい、中止したい人もいるでしょう。ただし、ベンゾジアゼピンには依存性があり、急にやめると離脱症状が出るため、簡単に中止できません。また、重篤な離脱症状が出ては危険です。そうならないように、ベンゾジアゼピンは少しずつ減らして中止します。文献では最低でも10週間以上かけて少しずつ減らし、中止していくようにと書かれています。つまり、目安は3ヶ月くらいですね。もっと長い時間がかかる場合もあります。


また、精神状態が安定している人ほどベンゾジアゼピンを減らしやすいです。逆に、精神的に不安定な時は、無理に減らさない方が良いでしょう。減らすと焦燥感が出たり、眠れなくなったりしてしまいます。薬を減らす前に、まずは気持ちを安定させることが大事です。このために、精神療法や心理カウンセリングで気持ちを安定させるのも良いでしょう。また、SSRIなど他の不安を取る薬を使うこともあります。他の依存性の少ない薬を使って精神的に安定させてからベンゾジアゼピンを減らすという方法です。ベンゾジアゼピンを減らし終わったら、他の薬も減らしていきます。


作用時間の長いベンゾジアゼピンに置き換えてやめる


ベンゾジアゼピンには色々な種類がありますが、効果の短いもの、作用時間の短いものほど離脱症状が出やすいです。効果の短いベンゾジアゼピンを使っている場合は、効果の長いベンゾジアゼピンに置き換えてから徐々に減らしてやめるという方法があります。離脱症状が出にくいのでやめやすい方法です。


例えば、ジアゼパムという作用時間の長いベンゾジアゼピン系抗不安薬があります。ロラゼパムやアルプラゾラムなどの作用時間の短い薬を使っている人は、同程度のジアゼパムに置き換えてから減らします。どのくらいの用量に置き換えるかを計算するためにジアゼパム換算表を使います。

なお、てんかんの治療としてベンゾジアゼピンを使っている場合は、ベンゾジアゼピンを減らすと、てんかん発作が再発することがあります。この場合は、最近のてんかん発作の頻度を確認したり、脳波検査を行ったり、他の抗てんかん薬を調整したりという別の方法が必要になりますので、ここで紹介した方法ではないと考えて下さい。

参考文献: Management of benzodiazepine misuse and dependence. Australian Prescriber. 2015.

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