精神科の診断の複雑さ

今回は精神科の診断について書きます。


精神科の診断には国際的な基準があります。アメリカで作られたDSM(現在第5版が最新です)という基準を使うことが多いですが、これには色々と問題があるんです。


この記事の一番下に書いた参考文献に、その内容が記載されています。それを元に、ここで私見も述べます。


DSMは主に症状によって精神疾患を大きく、統合失調症、双極性障害、うつ病、不安障害、トラウマやストレスが関連する精神障害といったカテゴリーに分類します。


ただし、それぞれに分類される精神疾患の症状が似通っていて、うまく分けられない場合もあります。それに、症状だけで分類して良いのかどうかも分かりません。症状には原因があるわけですが、その原因が診断に考慮されていないのです。


例えば、肺炎でも、細菌が原因なら細菌性肺炎、ウイルスならウイルス性肺炎などと、原因によって分類が変わります。しかし、精神疾患では、原因によって診断名が変わることが、ほとんど無いのです。


例えば、トラウマ(とてつもなくショックな出来事を意味します。心的外傷とも言われます)の後に起きる精神疾患は、うつ病、不安障害など色々あります。しかし、DSMでは、トラウマに関連する精神疾患を一つのカテゴリーだけにおさめてしまっています。そのカテゴリーの中の、代表的なものがPTSD(心的外傷後ストレス障害)です。


一方で、トラウマが原因でうつ病や不安障害になった人の場合、PTSDとは呼ばず、単にうつ病、不安障害と言います。原因が同じでも、症状によって病名が変わるんですね。しかも、うつ病も不安障害もPTSDと症状は似ています。そして、治療法もかなり似ているのです。そんなに似ているのなら、そもそも違うものとして分類する意味があるのか疑問ですよね。


ただし、精神疾患の原因と症状の関係は複雑で、原因を簡単に決められないという問題もあるのです。複数の原因が絡まって精神症状を作り出すことは多く、一つの原因に絞ることはできません。また、一つの原因により色々な精神症状が出たりもします。


まあ、そもそも人間の心は複雑な構造なわけです。精神機能を司る脳の構造も複雑で、まだ良く分かっていません。


DSMは、そんな複雑な精神疾患をシンプルに分類する診断基準なので、分かりやすいし、使いやすく、便利です。とても実用的なため、世界中で広く使われています。


しかし、実際のところ、心や精神はシンプルではありませんから、シンプルに分類するのは無理があるんですよね。


ということで、精神科の診断は、まだまだ正確とは言い難いものだということは、皆さんも知っておいて良いのかもしれません。見方によって診断名が変わることも珍しくありません。


診断名にこだわらなくても治療はできます。あまり、治療する上では診断名にこだわらなくても良いのかもしれませんね。


参考文献:Allsopp K, Read J, Corcoran R, Kinderman P. Heterogeneity in psychiatric diagnostic classification. Psychiatry Res. 2019 Jul 2;279:15-22.

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