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全般性不安障害の薬を網羅します

最終更新: 2019年6月14日


このページについて:全般性不安障害という多くのことが不安になる病気の薬について総合的に評価した研究論文を紹介します。


全般性不安障害とは、不安障害(不安症)の一種です。一つのことが不安になるというより、色々なことが不安になる精神疾患です。あれもこれも不安になってしまい、いつも落ち着かず、常に緊張しているような状態です。眠れなくなったり、自律神経のバランスを欠いて動悸がしたり、体が痺れたりすることもあります。

全般性不安障害について詳しく知る

全般性不安障害は、薬を使わずに治療することもできますが、有効な治療薬もあります。その最新の知見が発表されたので、今回はそれを紹介します。

ご紹介するのはシステマティック・レビュー(系統的レビュー)という多くの研究論文を統括するスタイルの論文です。ちなみに、海外の論文ですから、日本では使えない薬についても記載されています。

薬の研究では、ランダム化比較試験というものが最も信頼された手法です。薬を投与する、投与しない(偽薬・プラセボなどを投与する)というのをランダムに決めて、研究者が恣意的に患者を選んだり、データを操作できないようにします。

このシステマティック・レビューは、89個のランダム化比較試験の結果を集めたもので、患者総数は25,441人でした。非常に信頼性の高いデータですね。ちなみに、対象は成人で、子供ではありません。

この結果、デュロキセチンプレガバリンベンラファキシンエスシタロプラムは全般性不安障害に対する有効性が確認でき、副作用も少なかったということです。

デュロキセチンとベンラファキシンはSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)というタイプの抗うつ薬で、エスシタロプラムはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)というタイプの抗うつ薬です。全般性不安障害の治療はSSRIが主体とされてきましたが、今回集めたデータではSNRIの効果もしっかりと確認できたわけですね。

また、プレガバリンは日本では神経痛の治療に用いられている薬です。日本では精神疾患への使用が保険で認められていませんけど、実は不安を取る作用もあるんですね。

ミルタザピンセルトラリンなどの抗うつ薬も効果があり、副作用は少ないことが確認できたようですが、少しデータが小さかったようです。本邦未発売のフルオキセチンやブスピロンといった薬も、小さいデータなりに有効性や安全性が確認できたそうです。

あと、クエチアピンという薬は、最も不安を取る作用が強かったそうですが、副作用も強かったそうです。

パロキセチンというSSRIに分類される薬も、効果はあるけど副作用が難点という結果です。ベンゾジアゼピン系の抗不安薬も効果はあるものの副作用が懸念されています。

薬は効果が強いのは良いことですけど、副作用も考えないといけません。リスクとベネフィットの両方を考えて使うものです。そして、精神科の場合、まずは副作用の少ない薬から使うのがセオリーです。ただし、症状が強い場合などは副作用が強くても効果が強い薬を使うこともあります。

最後に、薬の効果を数値化したものを列挙しておきます。これは、ハミルトン不安評価尺度という不安症状を点数化する手法があるのですが、この点数がどれだけ変化したかを表した数値の平均です。つまり、マイナスが大きい方が治療効果が高いということです。

ただし、これは海外のデータです。海外では日本とは薬の用量が違うこともあるので単純に日本の薬にも当てはまるかどうかは分からないことを注釈させていただきます。

それでは、主な薬の名前と数値を、効果の強いものから順に列挙します。

  1. クエチアピン、-3.60

  2. デュロキセチン、-3.13

  3. プレガバリン、-2.79

  4. ベンラファキシン、-2.69

  5. エスシタロプラム、-2.45

とにかく、治療の選択肢は多い方が良いです。これだけ多くの薬で有効性が確認できたのは素晴らしいことです。この中から患者さん一人一人に合う薬を選ぶことで、良い治療が実現できます。治療する上で、とても参考になる論文でした。

引用文献:Slee A, et al. Pharmacological treatments for generalised anxiety disorder: a systematic review and network meta-analysis. Lancet. 2019.


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