• 斎藤 知之

全般性不安障害の治療の詳細

最終更新: 2019年6月14日


全般性不安障害の治療についての記事をアップデートしました。全般性不安障害は色々な治療法があります。イギリスのガイドラインに沿って、詳しく説明します。

全般性不安障害の治療には色々な方法があります。イギリスのガイドラインでは、ステップに分けて説明しています。こちらでも、そのステップに沿って解説します。

ステップ1:まずは評価です。全般性不安障害を見逃さず、しっかりと診断することから始まります。全般性不安障害の人は、しびれや動悸、冷汗などの身体症状が出ることも多く、内科、耳鼻科や整形外科などに受診することがあります。そこで検査して異常がなく、精神的な疾患が疑われる場合は、精神科や心療内科への受診を勧められます。精神科や心療内科では、問診を主体に診断しますが、本当に身体の異常がないか検査されることもあります。


全般性不安障害と診断された後は、医師から、全般性不安障害がどういう病気で、どのような治療方法があるのかを説明されます。人間は分からないことがあると不安になるものですから、しっかりと説明を受けることが大事です。

ステップ2:病気について説明したり、心理的に楽になる方法を教えたりすることを専門用語で心理教育と言います。この心理教育だけでも不安症状の改善が期待できます。


全般性不安障害と診断された場合、しっかりと休養、休息を取ることが大切です。仕事の最中も、時々は休憩を取ってください。眠れる方であれば、いつまでも夜更かしせずに早く眠りましょう。もし眠れないのであれば、椅子の上でリラックスして、ゆったりとした音楽を聞き、心を休めるのが良いです。また、目をつむってゆっくりと深呼吸をしたり、瞑想にふけったり(メディテーション)するのも気持ちを落ち着かせる効果があります。


それと、カフェインやアルコール、ニコチンを取りすぎると不安症状が増えたり、眠れなくなったり、朝早く目覚めてしまったりします。取りすぎに注意しましょう。

考え方や、物事の捉え方を見直すことも大事です。悪く考えたり、悲観的に考えたりすると、不安が募ります。考え方を変えたい人は、自分の考えたことを紙に書き出し、他人の書いたものだと思って読んでみるのも一つの方法です。客観的に見ると、自分の考え方が偏っていたり極端だったりすることに気づくものです。それに気づいたら、日頃から悪い方向に考え過ぎないよう注意すると良いと思います。

人付き合いも大事です。孤独になると心の健康を損なう可能性が増えます。一人の時間も大切ですが、ずっと一人で生活するのではなく、周囲の人と仲良くするのも大切なことです。友達や職場の同僚、家族など、自分の周りにいる人々を大切にして良好な人間関係を築くことができれば、心の健康を保つことにも役立ちます。

ステップ3:専門的な精神療法(心理療法)では、認知行動療法などがあります。正式な認知行動療法はしっかりとマニュアル化されていて、十数回にわたるセッションがあります(よりどころメンタルクリニック横浜駅西口では、マニュアル化された認知行動療法は行なっておらず、認知行動療法の理論に沿った短時間の小精神療法を行なっています)。これは自分の考え方や行動パターンを見直していく治療法で、全般性不安障害にも効果があります。認知行動療法は自分一人でも行うことができるワークブックなどが本屋さんで売っていますので、それを買ってやってみても良いと思います。また、自己啓発本などで自分とは違う考え方について学ぶのも大事かもしれません。

精神療法や心理療法だけで改善が難しければ、薬による治療もあります。SSRI(selective serotonin reuptake inhibitor:選択的セロトニン再取り込み阻害薬)という脳のセロトニンという神経伝達物質を増やす薬が一般的に使われます。これは、抗うつ薬の一種で、うつ病(大うつ病)の治療にも使われます。即効性はありませんが、数週間飲み続けると徐々に効果が出てきます。主な副作用は吐き気や眠気ですが、こうした副作用が出ないように、初めは少ない用量で開始し、数週間かけて徐々に用量を増やしていきます。また、10代、20代といった若い人に使うと、衝動的になったり、自殺のリスクが増えることが知られていますので、注意が必要です。SSRIにはいくつか種類があるので、もし、最初に使ったSSRIで効果がなければ、他のSSRIに変えます。もしくは、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)というタイプもあり、こちらも全般性不安障害に使うことがあります。これも抗うつ薬の一種です。最近の研究では、SNRIの効果も高く評価されているようです。

全般性不安障害の薬を網羅した研究論文はこちら


なお、SSRIやSNRIなどの抗うつ薬を中止するときは、いきなり中断するのではなく、少しずつ減らしていきます。もし急に中断すると、吐き気やめまい、体の震え、発汗、強い不安感などの離脱症状(中断症候群)が出てきてしまうからです。このため、減らす場合は勝手に行わず、医師に相談した上で減らすことが大事です。


ベンゾジアゼピン系(よくベンゾなどと略されます)の抗不安薬は、日本ではよく使われますが、イギリスのガイドラインではあまり推奨されていません。ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、即効性があるのですが、つい沢山飲みたくなってしまい、薬物乱用にいたることがあります。また、何ヶ月も使っていると依存性が出てきて、やめられなくなることがあります。他にも忘れっぽくなったり、ミスが増えるなど認知機能障害という副作用もあり、なるべく使わない方が良いとされています。どうしても使うのであれば、依存性が出ないように、短い期間だけ使います。


ベンゾジアゼピンの副作用について詳しく知る

また、抗精神病薬という脳のドパミンを抑える薬が使われることもあります。抗精神病薬には第一世代(定型)と第二世代(非定型)がありますが、基本的には副作用の少ない第二世代が使われます。


抗精神病薬についてはこちらで説明しています

ステップ4:なかなか治らない場合は、再度、しっかりと評価することが大事です。違う診断の可能性も出てきますし、不安症状の原因となるような事柄を見落としている場合も考えられます。

生活環境の中でストレスが強すぎる場合も考えられます。例えば、家庭内で暴力を受けていたり、職場で何らかのハラスメントを受けてたりすると、精神症状が改善しないのは当然です。そのような場合では、環境を変えるために社会的な介入が必要かもしれません。保護的な意味で、入院環境の下に治療をするという方法もあります。

薬を使っている場合は、薬の使い方が適切か、飲み忘れていないかも確認が必要です。ちゃんと使っているのに効果がない場合は、いくつかの薬を組み合わせて効果を高めるという方法もあります。ただし複数の薬を使うと副作用のリスクも上昇するので、注意が必要です。また、認知行動療法と薬物療法を組み合わせるという方法もあります。

自傷行為や自殺企図の危険性など、身体や生命の安全に関わるようなリスクが発生した場合は、入院での治療を考えないといけません。精神科に入院したいと思う人は少ないでしょうが、身体や生命を守ることが最優先になります。


引用文献:

全般性不安障害のガイドライン

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