働く人のメンタルヘルス(心の健康)


このページについて:働く人のメンタルヘルス、心の健康について厚生労働省の統計をもとに考えます。


厚生労働省の統計は問題が指摘されることもありますが、やはり大規模な調査ですから参考になる点も多いと思います。毎年行っている労働安全衛生調査では、労働者のストレスについて調べられています。働く人の心の健康をどう保つかということは、多くの人が抱える課題です。その課題について考えるためにも、実態について把握することは必要でしょう。ここでは平成28年度の労働安全衛生調査の結果を取り上げながら、対策を考えたいと思います。

さて、一言にストレスと言っても、色々なものがあります。十人十色と言いますが、人間の心や性格は人それぞれ違います。当然、ストレスに感じることも、人によって違います。それでは、働く人のストレスとして、一番多いものはなんでしょうか?

労働安全調査によれば、強いストレスとして最も多くの人があげていたものが「仕事の質・量」です。労働者全体の53.8%の人が仕事の質・量に強いストレスを感じるという結果が出ました。仕事のストレスとはなかなか評価が難しいものです。物理的に仕事量が多いということもあるでしょうし、クレーム処理のように心理的に辛い仕事もあると思います。それらが組み合わさることもあると思います。

続いて強いストレスとして挙げられたものが「仕事の失敗、責任の発生等」で、全体の38.5%の人がこの回答をしています。当たり前ですが、失敗しない人間はいません。そして、やはり失敗すれば、悲しい、悔しいなどの嫌な感情がわいてくるのは自然なことです。

役職が上がると、失敗した時におおいかぶさってくる責任も重くなります。失敗したら何らかのペナルティが発生する場合もあるでしょう。失敗した時に責任が発生するということは、別に労働者だけの問題ではありません。社会では通常の話です。しかし、なんらかの失敗が発生し、その責任を追及する時は、それが大きなストレスになることも知っておいた方が良いと思います。

責任追及は、周囲に示しをつけることもあるでしょうが、ようは新たな失敗を防ぐ、再発防止のための策でしょう。あくまで次に繋がる建設的な方法として行うものです。しかし、過剰な責任の追及は、本人にとって強いストレスになり、その人を精神的に再起不能にしてしまう可能性もあります。また、周囲への強いプレッシャーになる可能性もあるでしょう。

強すぎる重圧、ストレスは仕事の能率を下げます。責任を追及する時は、大事な人材の能力を低下させる可能性についても検討が必要でしょう。

さて、労働者のストレスは、仕事に関するものだけではないようです。第3位のストレスは「対人関係」です。30.5%の労働者が対人関係が強いストレスになると述べています。

人間がたくさん集まり、集団が形成されると、その中には当然、仲良くなる人たちもいれば、不仲になる人たちもいます。一人で働く人は少ないでしょうから、グループで働く以上、ある程度の対人関係の問題は仕方ないと思います。ただ、この調査ではセクハラやパワハラも対人関係の問題に含まれています。セクハラやパワハラは、倫理的にも大きな問題になりますし、職場の雰囲気を最悪なものにする可能性もありますから、ここについては改善策が必要になるでしょう。

対人関係はストレスになるだけではなく、心の支えになるような良い対人関係(ソーシャルキャピタル)もあります。特に、周囲に相談できる相手がいるかいないかで、気の持ちようが変わります。この調査では相談できる相手がいるかどうかも調べられています。家族、友人に相談できる人がいると答えた人は全体の84.8%でした。また、上司や同僚に相談できる人がいると回答した人は、全体の76.0%です。逆に、24.0%の人は職場に相談できる人がいないということかもしれません。

しかし、こちらは選択式の回答ですが、相談できる職場の人間が「上司・同僚」に限定され、「部下・後輩」がいないというのも日本らしいなと思います。別に年齢や役職に問わず相談しても良さそうなものですが、どうしても上下関係ありきというか、下のものには弱みを見せない文化があるのではないでしょうか。私の個人的な意見では、とにかく本音で話せる人、心の支えになってくれる人であれば、部下や後輩でも積極的に相談すれば良いと思います。

精神疾患が発生するリスクの一つが「孤立」です。誰にも相談せず一人で抱え込むと、ストレスが大きくなりすぎてしまう傾向があります。これを防ぐためにも、日頃からコミュニケーションを取ったり、気軽に話し合える人間関係を作っていくことが大事です。

さて、働く人のストレスについて統計を見てきましたが、最後に、こうしたストレスの問題は個人の問題では終わらないとこにも言及したいと思います。完全に一人で働いている場合は別ですが、大抵の職場では多くの人が一緒に働いています。一人が強いストレスを感じれば、その人に接する他の人たちにもストレスが波及します。なんとなく全体の雰囲気がどんよりしたり、ピリピリしたりしてしまうでしょう。そうした雰囲気が、仕事の能率を下げる原因になるかもしれません。逆に、職場の雰囲気が良ければ、メンタルの不調による休職者の発生を防いだり、労働者の士気や集中力を上げて仕事の能率を上げることができるかもしれません。つまり、労働生産性を考える上でも、メンタルヘルスの組織的な取り組みが重要だと言えるのです。

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