• 斎藤 知之

リチウムの妊娠中の影響

今回は、リチウムという薬の副作用についての研究を紹介します。妊娠中の胎児への影響についてです。


双極性障害は、別名、躁うつ病とも呼ばれますが、うつ状態と躁状態という、怒りっぽくなったり、非常に活動的になる状態の両方が出現する病気です。双極性障害の薬は色々とありますが、リチウム(炭酸リチウム)はよく使われます。


(双極性障害の治療についてはこちらで詳しく説明しています)


双極性障害は薬を止めると再発のリスクが高いため、基本的にはずっと薬を使い続ける必要があります。リチウムは双極性障害の再発を予防する効果が高いのです。


リチウムを使う際は、血液検査を定期的に行う必要があります。リチウムによる腎障害や甲状腺機能障害などの副作用を確認するのが血液検査の目的の一つです。もう一つの血液検査の目的は、リチウムの血中濃度を測定することです。この血中濃度により、リチウムの有効性や安全性を判定できるのです。


リチウムは効果がしっかりしている薬ですが、妊娠中の女性が使うと赤ちゃんに奇形が生じるという問題点があります。可能性は低いのですが、ゼロではありません。リチウムは心臓の奇形が一番有名ですが、これは親御さんにとっては心配な話ですよね。


日本ではリチウムは妊娠中に使ってはいけないことになっています。


今回は、リチウムの胎児への影響を調べた研究論文を紹介します。これは系統的(システマティック)レビューと言って、多くの論文を集めて解析したものです。


ここでは、女性の双極性障害をもつ患者さんの中で、リチウムを使用した場合の有効性や安全性を調べた29の研究が集積され、統計を取られています。


この結果、やはり、リチウムが子供の先天性の異常、つまりは生まれる前の異常と関係することが明らかになりました。わずかですが胎児が心臓の異常を持つ可能性が高くなります。また、妊娠の最初の1/3の期間に当たる0-13週の時期にリチウムを使うと、流産するリスクも増えるそうです。


ただし、リチウムを少量で使うと心臓の奇形のリスクは上がらないという結果も出ました。リチウムが1日600㎎未満であり、さらに血中濃度が0.64mEq/L未満であれば、心臓の奇形のリスクは上昇しないという結果でした。


また、有効性ですが、リチウムを使う方が、リチウムを使うと双極性障害の再発のリスクが減ることも分かりました。産後のうつ状態や躁状態をリチウムが防いでくれるのです。


妊娠中や産後にうつ状態や躁状態になると、自殺の危険性なども懸念されます。また、お母さんの精神状態は子供に大きく影響するため、母親の精神状態の安定は大事です


日本では、妊婦さんにリチウムを使えないので、妊娠の際はリチウム以外の薬を使います。しかし、急に妊娠が発覚することもあるでしょう。女性にリチウムを使う場合は、念のためにリチウムを少な目に使う方が良いかもしれません。また、しっかりと血液検査を行い、血中濃度を低めに保つ方法も検討して良いと思います。


参考文献:Lithium Exposure During Pregnancy and the Postpartum Period: A Systematic Review and Meta-Analysis of Safety and Efficacy Outcomes. Am J Psychiatry. 2019.


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