オランザピンによる神経性無食欲症の治療


このページについて:オランザピンという向精神薬が摂食障害の一種である神経性無食欲症の治療に有効か否かを調べた研究を紹介します。


今回は摂食障害の薬の治療について研究した論文を紹介します。

摂食障害とは、やせるために過剰なダイエットを続ける、過食した後に吐くことを繰り返すなどの異常な食行動がみられる精神疾患です。

摂食障害にはいくつかのタイプがありますが、健康を損なうほどやせてしまう場合を、神経性無食欲症と言います。

人間の身体はエネルギーをとらないといけません。もちろん太りすぎも体に良くないのですが、無理な食事制限も健康に悪いのです。あまりに痩せてしまうと体力は低下し、女性であれば月経(生理)が止まります。重症化すると肝臓などの内臓も障害され、まれに死んでしまう場合もあります。決して軽く見て良い病気ではありません。

しかし、神経性無食欲症の患者さんは、痩せていく達成感もあり、痩せることが悪いこととはなかなか思えません。また、どれだけ痩せても自分が太っている気がするなど、自分に対する意識も変わってしまいます。このため、「病気だから治療しよう」とは思いにくい病気です。

やせないと「いけない」などと何度もくり返し考えてしまい、ダイエットが止められなくなってしまうと、神経性無食欲症になっていきます。同じことを何度もくり返し考えてしまったり、一つの考えに支配されてしまうような症状を、強迫思考と呼びます。強迫思考は強迫性障害という病気でもみられますが、神経性無食欲症でも強迫思考がみられます。

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神経性無食欲は治療が難しく、なかなか有効な薬がありません。精神療法や入院治療が行われますが、それでも改善しない人は多いです。

今回は、神経性無食欲症の治療薬の研究についてご紹介します。

統合失調症や双極性障害(躁うつ病)などの治療に使われるオランザピンという薬があります。オランザピンは気分を安定させたり、興奮を抑える作用がありますが、食欲亢進、体重増加という副作用があります。そのため、肥満などが問題になります。

あまり太ってしまうと健康に悪いのですが、神経性無食欲症のように痩せすぎている場合には、オランザピンの副作用が逆に良いかもしれませんね。というわけで、オランザピンが神経性無食欲症の治療に有効かどうかが調べられました。

この研究はランダム化比較試験という、バイアスがかかりにくい研究デザインです。つまり、正確な評価が可能な研究ということですから、研究結果の信頼性は高いと言えます。

この研究には、神経性無食欲症のため外来で治療している患者さん152人が参加しました。ちなみに、96%が女性です。神経性無食欲症は女性の方が圧倒的に多いんですね。

研究の参加者はランダムに、オランザピンの治療を受けるグループと、プラセボという偽物の薬を使うグループに分けられます。

そして、16週間治療を続け、体重が増えるかどうか観察されます。また、先ほど神経性無食欲症では強迫性障害と同じような症状が見られると説明しましたが、この研究では強迫症状が改善したかどうかも調べられています。

その結果ですが、オランザピンによる治療を受けたグループは、プラセボで治療したグループよりも体重が増えていました。オランザピンには確かに体重を増やす作用があると確認されたわけです。しかし、残念ながら、強迫症状については改善が見られませんでした

言い換えると、オランザピンは神経性無食欲症の人たちの身体は改善させるけど、心は改善させないという結果でもあります。

神経性無食欲症では、あくまで精神疾患であり、心理的な症状がある病気です。気持ちの不安定さや、考え方の偏りなどが見られます。そこを改善するのが大事なので、オランザピンの効果はいまいちということかもしれません。

薬の研究はなかなか良い結果が出ないで頓挫することも多く、本当に大変ですね。今後、より良い治療法が開発されることを期待しましょう。

引用文献:Attia E, et al. Olanzapine Versus Placebo in Adult Outpatients With Anorexia Nervosa: A Randomized Clinical Trial. Am J Psychiatry. 2019.

#強迫性障害 #摂食障害

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