• 斎藤 知之

過剰な診断と治療


このページについて:過剰な診療について解説します。精神科では、時に、過剰な診断や過剰な治療が問題になります。


別に精神科に限ったことではありませんが、どこの診療科でも、過剰に診断し、過剰な治療を施してしまうことがあります。「もしかするとこの病気ではないか?」という疑いが、いつしか、ちゃんとした根拠もなく確信へと変わり、病気ではないものが病気と診断されてしまったり、治療されてしまったりするのです。

過剰な治療の例としては、薬を使った治療が必要なくても、薬を使ってしまうというケースがあります。かつてよくあったのは、風邪で抗生物質を使うケースです(今だにあるかもしれません)。風邪はウイルス性がほとんどですから、抗生物質は効きませんし、そもそも自然治癒しますから薬を使う必要も少ない病気です。それなのに病院に行くと抗生物質が処方されるというケースがよくありました。

どの薬にも副作用がありますが、抗生物質にも当然副作用のリスクがあります。必要のない薬を処方されることで、患者さんは無用なリスクにさらされることになります。また、抗生物質を多くの病院で処方しすぎたために、抗生物質が効かない細菌が増えるという問題も発生しました。このように、過剰な診断や過剰な治療は、有害になることがあります。

では、精神科において過剰な診断、過剰な治療とはどういうものでしょうか?

例えば、うつ病で過剰に診断する場合があります。うつ病の国際的な診断基準はまだまだ未完成な点が多いのですが、それでも一応は診断する基準というものがあります。これを見ると、うつ病の症状は1つではなくて複数なければならないとあり、また、ほぼ毎日、ほぼ一日中、症状が続かなければならないと書かれています。人間誰しも気持ちが落ち込むことはありますが、大抵の人は毎日落ち込んでいるわけではありませんし、24時間ずっと落ち込んでいるわけでもありません。つまり、誰もが経験する気分の落ち込みは、うつ病とは言わないわけです。しかし、誰もが経験するような、一時的な気分の落ち込みまでうつ病と診断し、抗うつ薬を処方する精神科医は少なくありません。

このように何でもかんでも病気にしたり、無駄に投薬されてしまう問題は、別に日本だけの話ではなく、世界的に存在する話です。時々、社会問題として取り上げられることもあります。この弊害は、やはり副作用のリスクでしょう。抗うつ薬は昔と比べて副作用が少なくなるように改善されていますが、それでも一定の副作用はありますし、急に中断すると強い副作用が出るリスクもあります。また、治療にはコストがかかります。それなりのお金がかかりますし、時間も奪われます。過剰に診断したり治療したりすると、色々と弊害があるわけです。

しかし、だからといって過小評価も危険です。何でもかんでも「大したことない」と思ってしまうと、病気を見逃すことにつながります。例えば、重度のうつ病は自殺のリスクが上がります。これを見逃すということは、自殺のリスクを見逃すということです。命のリスクが出るので、とても危険です。

つまり、過剰な診断でもなく、過小評価でもなく、適切に診断し、評価する必要があります。端的に言えば、正確な評価が大事なのです

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