• 斎藤 知之

パニック障害の治療について説明します


このページについて:パニック障害の治療を詳しく説明します。パニック障害にはSSRIなどの抗うつ薬や精神療法による治療が有効です。


パニック障害の治療は、まず、病気についてしっかりと理解することから始めます。特にパニック発作があると、体に症状が出ているため、自分の体に異常があるのではないかという不安も生じると思います。そう考えると更に不安要素が増えてしまいます。そうではなくて精神的な症状、メンタルの症状であることを知ることで、不必要な不安を減らすことができます。また、自律神経失調症というように、さも自律神経が障害されているかのような病名をつける医師もいますが、これは誤解です。パニック発作は自律神経自体が障害されたものではなく、あくまで不安や恐怖により自律神経のバランスが崩れる病気です。なので、「自分の自律神経が壊れた」などと心配する必要はありません。このように、正しい知識を得ると不安は減ると思ってください。

また、自分なりに不安をコントロールすることも大事です。まずは、一日の中でリラックスする時間を作り、余暇を楽しむことがお勧めです。ゆったりとした音楽を聴いたり、本を読んだりと、気持ちを落ち着かせて楽しめることを行ってください。この方法は人によって違うと思います。また、目を閉じて深呼吸をする、瞑想する(マインドフルネス)という方法も心を落ち着かせる効果があります。

もっと専門的に精神療法(心理療法)を受ける場合もあります。パニック障害の精神療法では、認知行動療法が最も根拠の確立した方法です。認知行動療法は、認知療法と行動療法を組み合わせたもので、自分の否定的な考え方を見直したり、行動を見直したりする作業を医療者と一緒に行っていきます。ただ、まだ日本では行っている医療機関は少ないかもしれません。

パニック障害の薬物療法では、抗うつ薬を使います。つまり、うつ病の治療薬と同じものです。SSRI(Selective Serotonin Reuptake Inhibitor:選択的セロトニン再取り込み阻害薬)という脳内のセロトニンを増やすタイプが最もよく使われますが、SNRI(Serotonin Noradrenaline Reuptake Inhibitor:セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)という種類の抗うつ薬もあります。少し古いタイプで、三環系抗うつ薬もパニック障害の治療に使われることがあります。ただ、三環系抗うつ薬の方がSSRIなどの新規の抗うつ薬よりも副作用が強いので、最初から使われることは少ないでしょう。

こうした抗うつ薬は少量から始め、数週間かけて少しずつ増やしていきます。抗うつ薬に即効性はありませんが、飲み続けていると少しずつ効果が出てきます。なので、すぐに効果を期待するのではなく、少し気長に構える必要があります。数週間待てば、だいたい半分以上の方で症状の改善が見られます。ただ、抗うつ薬を3ヶ月(12週間)ほど使っても効果が出てこない場合は他の抗うつ薬に変更します。

病気が良くなって抗うつ薬を中止する場合は、少しずつ減らす必要があるので注意が必要です。いっきに減らしたり中断したりすると吐き気やめまいが出たり情緒不安定になったりという離脱症状(中断症候群)が出てしまいますので、急な中断は避けなければなりません。

日本ではベンゾジアゼピン系の抗不安薬が使用されることが多いのですが、イギリスのガイドラインには、長期的にパニック障害の予後を悪くするのでベンゾジアゼピンは使用すべきでないと書かれています。確かに、ベンゾジアゼピンは短期的には不安症状を抑える効果がありますが、1ヶ月以上使用すると依存性が出てきます。一度、ベンゾジアゼピンに依存してしまうと、なかなか中止できません。また、長らくベンゾジアゼピンを使った後に急に中止すると、離脱症状としてパニック発作に近い症状が出ることもあります。せっかくパニック障害が良くなっても、ベンゾジアゼピンを中止するだけで症状が再発してしまうのです。これでは、治療する意味がないですよね。

また、抗精神病薬という脳のドパミンを抑える薬もパニック障害だけの場合では使用すべきでないとしています。ただし、抗精神病薬は例えばうつ病など色々な精神疾患の治療に使います。そして、うつ病の症状としてパニック発作が出る場合もあるのです。この時は、うつ病として治療するので、抗精神病薬を抗うつ薬と一緒に使うことがあります。

参考文献:

  • DSM-5(米国精神医学会, 2013)

  • Generalised anxiety disorder and panic disorder in adults: management(NICE: 英国国立医療技術評価機構, 2011)

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