• 斎藤 知之

精神科に入院を考える状況について説明します


このページについて:精神科への入院を考えなければならない状況、精神状態について説明します。


精神科に限らず、治療は外来が基本です。入院は通院よりもお金がかかりますし、自由が制限されます。そもそも、病院の中にずっといないといけないなんて気が滅入りますよね。もしも、入院して治療するか、通院で済ませるか選べるとしたら、大抵の人は、できれば入院せず外来で治療したいと思うことでしょう。(ちなみに、往診や訪問診療というスタイルもありますが、やはり通院よりはコストがかかります)

したがって、なるべく外来通院で治療することを考えるわけですが、やむを得ない事情で入院しなければならない場合もあります。今回は、精神科で入院を検討する状況について解説します。

精神科の場合、入院を考える絶対的な状況は、今にも自殺してしまいそうとか、他人を傷つけてしまう恐れが高い場合です。精神状態が非常に悪くなると合理的な判断ができなくなりますから、衝動的に自分を傷つけたり、興奮して他人に暴力を振るったりすることも稀にあります。医師としては、患者さんの身の安全を確保することが最優先事項ですし、周りの人が傷つくのも防がないといけません。これは、単に医学的判断というよりも、社会的、倫理的な価値観が関係する判断とも言えます。社会的なセーフティネットの役目も担うわけです。

日本の法律や行政システムとしても、自傷または他害の恐れが強い場合は緊急的な入院を手配する流れができています。例えば、精神症状が強いため他者に暴力を振るってしまい警察がくるような状況になった時に、警察から精神科の入院を要請することができます。これを措置入院と言いますが、行政措置として強制的(非自発的とも言います)に入院させるような方法で、措置入院と言います。自殺企図の恐れが強い場合も同様に措置入院の対象となります。ただ、こうしたケースは稀です。

その他には、病状が悪くて通院が難しい場合や、自宅で治療できない場合なども入院を考えます。重度の抑うつ状態では、歩くのもしんどい状態になりますので、通院は困難です。また、薬を使っているのに、自宅ではしっかりと飲むことができない場合も、外来での治療は難しいでしょう。こうした場合では、治療を継続するには入院するしかありません。

精神状態だけでなく、身体状況が悪い場合も入院を考える必要が出てきます。例えば、精神疾患のために食事や水分が摂取できなくなることがありますが、これが酷くなるとビタミン欠乏症になったり、脱水症になったりします。さらに酷いと、不整脈が起きたり、心不全になったりすることもあります。そんな場合では、身体の状態を整えるためにも入院治療が必要になります。

自宅でストレスが強すぎたり、看病してくれる人がいなかったりする場合も、入院を考えることがあります。自宅で治療する体制が整わないから、入院して治療体制を整える場合です。人によっては、家庭環境が治療に適さない場合もあるでしょう。つまり、自宅にいるよりも入院する方がましという状態であれば、入院の方が治療に適しているというわけです。

また、いくつかの精神疾患の治療では、入院しないと実行できないものもあります。例えば、クロザピンという特殊な薬を使う場合や、修正型電気けいれん療法を行う場合などは、外来では行うことが難しいため入院が必要になります。このような治療のために入院するケースもあるでしょう。しかし、こうした治療を行う場合は、重症だったり、難治性(なかなか治療しても良くならない状態)だったりする場合です。やはり、病状の重症度に左右されるという言い方もできると思います。

ということで、精神科の入院では、色々なケースが想定されることがお分りいただけたでしょうか。なお、精神科の入院には本人が自ら入院に同意する任意入院という形態だけでなく、本人は入院を拒否していても入院させる形態があります。例えば、患者さんの家族に同意してもらう医療保護入院や、先ほど述べたように行政措置として入院させる措置入院などのケースです。ただ、このような場合でも、患者本人の人権を無視して良いわけではなくて、しっかりと患者さんの人権を守りつつ治療を行うよう法律が定められています。「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」という名称になりますので、興味のある方は調べてみてください。


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