子供の頃の幻覚や妄想

今回は子供時代の幻覚や妄想などの精神病症状について、研究論文を紹介します。


みなさんは精神病(または精神病症状)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。


精神病は精神疾患と間違えやすいのですが、ちょっと違います。精神疾患とは広いカテゴリーで、ストレス性の疾患や不安症、うつ病など全てを含みますが、精神病はもっと狭いカテゴリーです。


現実にはないことを考えたり、知覚したりする症状を精神病症状と呼び、これが続く精神疾患を精神病と言います。


現実にはないというのは、例えば妄想や幻覚などです。例えば、見も知らぬ人から監視されていると信じ込んだり(被害妄想)、ありもしない人間が見えたり(幻視)、現実にはない話し声が聞こえたり(幻聴)、というものが精神病症状と呼ばれます。こういう症状が続く病気が精神病と呼ばるカテゴリーで、代表的なものとしては統合失調症が精神病というカテゴリーに入ります。


大の大人が非現実的なことを言い出すのは問題です。ただし、子供の場合はそうとも言えません。そもそも、誰でも幼いころは現実と非現実の区別が難しいわけです。子供が現実にはないものを考えたり知覚したからと言っても、異常とは言えません。


子供の頃は、割と多くの人に精神病「的」な体験があるわけです。ただし、これが本当の精神疾患になってしまうと困りますよね。


今回は、子供の頃に精神病的な症状がある、非現実的なことを言う者の中で、どのくらいの割合の子が本当の精神疾患になるのか調べた研究をご紹介します。


この研究では、6198人の子供を3年間にわたって追跡調査しました。子供たちの精神病的な体験の有無や精神疾患の有無などが調査内容です。また、子供たちのトラウマ体験(非常に辛い体験)の有無など、その他の精神疾患に関係する要因も調べられました。


この結果によると、精神病的な体験の頻度が次第に増えていく場合、3年間の中で3.39%の人が精神疾患と診断されました。一方で、特に頻度も増えず安定している場合は、1.28%の人だけが精神疾患と診断されたそうです。


数字は比較すると意味が出てくるのですが、結果を見ると、精神病的な体験が徐々に増えるか、そうでないかで確率が違います。明らかに、増えていく子供たちのなかで精神疾患になる確率が増えています。


さらに調べると、精神病的な体験が増えていく子供たちは、精神病のカテゴリーに入る精神疾患になる確率も増えますし、それ以外の精神疾患になる確率も高かったそうです。これは統計学的に解析しても有意なものでした。


また、その他の要因としては、トラウマ体験や両親の離婚を経験した子供、少数派民族の子供などは、精神疾患になりやすい傾向が見られました。強いストレスや社会的な問題を抱えると、精神が不安定になりやすいということで、当然の結果ともいえます。


この結果から考えると、子供が単に非現実的なことを言っていても心配しなくて大丈夫そうですが、それが次第に増えていくようだと精神疾患になるリスクが増えるので、少し心配したほうが良いということになりそうです。


参考文献:Zhang W, et al. Longitudinal Trajectories of Psychotic-Like Experiences and Their Relationship to Emergent Mental Disorders Among Adolescents: A 3-Year Cohort Study. J Clin Psychiatry. 2019.

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