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PTSDに経頭蓋磁気刺激は有効か?

今回は経頭蓋磁気刺激という治療法の研究論文をご紹介します。


脳に強力な磁気を流すことで電気的な刺激を起こし、脳の病気を治療する方法があり、精神疾患の治療に用いられています。頭の外側から磁気を当てて、頭蓋骨を経て磁気による刺激を与えるわけです。これをそのまま、経頭蓋磁気刺激と言います。英語の略語でTMS(Transcranial Magnetic Stimulation)と呼ばれることが多いです。


似たような治療で、電気けいれん療法という治療もあります。これは磁気でなく、頭に電気を流す治療で、うつ病などの治療に使われます。電気けいれん療法は全身麻酔下で行われますし、大抵は入院してから実施されます。治療効果は高いのですが、大がかりな治療と言えます。


TMSは、電気けいれん療法ほど侵襲的なものではなく、麻酔も不要ですし、入院せず外来通院でも実施できます。電気けいれん療法と比べると、お手軽ですね。


一般的には、なかなか治らないうつ病に対してTMSを行うことがよく知られていますが、最近はうつ病以外の治療にも使えないかと研究が進んでいます。


今回はPTSDの治療にTMSが効くかどうかを調べた研究をご紹介します。


PTSDとは、心的外傷後ストレス障害(Posttraumatic stress disorder)の略語です。典型的には、死ぬほど怖い体験をした後に、眠れなくなったり、急にその時のことを思い出したりする症状が何ヶ月も何年も続くような精神疾患です。アメリカでは退役軍人の精神疾患として問題になっています。


ご紹介する研究では、PTSDを患う50人の退役軍人の方がTMSによる治療を受けました。そして、偽の治療を行った方と効果が比較されます。


TMSは週5回を目安に何週間も施行することが多いのですが(例えば合計20-30回などと沢山やります)、この研究ではシーターバーストという即効性のある新しい手法を用いたので、10日間だけTMSが行われたようです。


治療開始から2週間後ではあまり有効性は確認できなかったものの、1ヶ月後ではPTSDに対して有効性が確認できたということです。


また、26に対して、治療前に頭のfunctional MRI(普通のMRIとは少し違う方法で撮影します)という検査をしたところ、その結果により、どういう人でTMSが有効なのか予測することもできたということです。


TMSがうつ病以外でも有効というのは良い情報ですし、さらに改良によって少ない回数で効果が出るのであれば、治療費用も安くなるので、経済的にも嬉しいですよね。また、事前に検査して「あなたはTMSが効きます」みたいに予測が立てられれば、どの治療を行うか選ぶときに役立ちます。


これは、とても実用的な研究だと思います。さらに成果が出ると良いですね。


参考文献:Theta-Burst Transcranial Magnetic Stimulation for Posttraumatic Stress Disorder. Philip NS, et al. Am J Psychiatry. 2019.

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