精神科の生物学的な検査(バイオマーカー)の研究


このページについて:血液検査や画像検査などの生物学的指標(バイオマーカー)が精神疾患の診断に有効ではないかと注目されています。


今回は精神科の診断に関する話です。精神疾患はまだ分からないことが多く、診断も難しいのが現状です。一応、DSMやICDといった国際的に使われている診断基準もあるのですが、まだまた発展途上です。

その理由の一つが、診断を客観的に検証できない点です。例えば、内科の病院に行けば、血液検査やレントゲンなどの科学的な手法を用いて病気を評価してから診断します。血液検査やレントゲンであれば人間の知覚では分からない部分も評価できますし、なにより機械や薬品を使う科学的な手法であれば、客観的に病気を評価できます。検査のデータは、個人の価値観や主観に左右されて値が変わったりしません。

しかし、精神科の場合は患者さんの言葉を聞くだけで診断します(精神科で血液検査をする場合は精神疾患以外の病気がないか確認したり、副作用を調べたりするためで、直接的に精神疾患の診断に結びつくものではありません)。この方法では患者さんの主観によって診断が左右されてしまいます。なかなか自分の感情を正確に知るのは難しいものです。患者さんが自分の気持ちをよく分かっていないこともありますが、その場合は、精神科医に症状をしっかりと伝えられません。また、そもそも自分の気持ちを正確に人に伝えるのも難しい作業です。心理検査を使って評価する場合もありますが、心理検査も結局は患者さんの主観に大きく左右されます。これでは、ちょっとあやふやな感じですよね。

また、患者さんの言うことを捉える精神科医の価値観や能力も様々です。精神科医の主観によって診断が変わることも珍しくありません。例えば、一人の患者さんを精神科医Aと精神科医Bが診察した場合、精神科医Aと精神科医Bの診断が違うことがあります。実は、精神科医によって診断が変わることは珍しくないのです。このように精神科の診断は個人の主観で決まるため、客観性に乏しいところが欠点です。この欠点を改善するため、より科学的に精神疾患を診断しようという試みがあります。内科のような検査をする方法で、生物学的指標、バイオマーカーと呼ばれます。

現在研究中のバイオマーカーは本当に色々な種類があります。精神疾患は脳の病気でもあるので、脳を直接調べるような頭部MRI、CTもありますし、脳の電気を計測する脳波検査もあります。近赤外線を使って脳の血流を読み取るNIRSはうつ病の検査に有用と考えられています。放射線を出す物質を使って脳の機能を調べるSPECT、PETなどの検査もあります。また、血液検査によって微量なタンパク質などを調べる方法や脳脊髄液を注射器で取ってきて調べる方法も研究されています。これらはそこそこ良い結果を出しており、今後さらに伸びる分野だと考えられます。

しかし、実際の医療で使用する検査には高い精度が必要で、それを裏付けるに足る大規模なデータ(ビッグ・データ)が求められます。まだ実用段階に至るほど高い精度、データをもつバイオマーカーはほとんどないですが、今後、研究が進めば実用化されるものも出てくると思います。バイオマーカーは精神科の診療に大きな発展をもたらす可能性があります。今後の研究開発に期待したいですね。


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