よりどころメンタル

精神疾患による休職と復職

職場のストレスが強く、仕事を休みたいと思う方は少なくないはずです。強いストレスが続くと、精神状態のバランスを崩しやすくなります。もしも、うつ病や不安症、適応障害などの精神疾患になった場合、休職して心を休めるのも治療の選択肢です。


精神疾患も普通の病気と同じで、無理すれば悪化して改善しにくくなります。そうならないためにも、休職して治療に専念するのです。


精神疾患により休職してから復職するまでの過程や方法論を厚労省の手引きを引用して説明します。また、職場側がどのように休職者の復帰をサポートするのか海外のプログラムを引用して解説します。


休職から復職まで


精神疾患により休職する場合は、今後どうなるのか不安な点も多いと思います。まずは休職から復職までの流れについて知っておきましょう。

厚労省が発行する「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」を見ると、休職から復職(職場復帰)までの流れは以下の4ステップがあり、復帰後もフォローアップが必要と解説されています。

  1. 病気休業開始及び休業中のケア

  2. 主治医による職場復帰可能の判断

  3. 職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成

  4. 最終的な職場復帰の決定

  5. 職場復帰後のフォローアップ

大事なのはステップ1-3ですので、これらについて説明します。


ステップ1「病気休業開始及び休業中のケア」


病気休業は、医療機関から休職が必要という旨の診断書をもらい、それを提出することで始まります。職場側からは、傷病手当金などの経済的な手当や休業の最長期間などについて、説明があると思います。もし説明が無い場合は担当部署に確認しておいた方が良いでしょう。


傷病手当金とは、病気休業の際に給与の2/3に相当する金額が後に支給されるもので、非課税になります。医療機関に通院または入院している場合は、医療機関で傷病手当金の申請書を記載してもらえます(通院/入院していない場合は発行されないので注意してください)。詳しい説明は下記をご参照ください。健康保険組合により多少の違いはありますが、共通点も多いと思います。


全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき」

その後に病院やクリニックなどで治療し、症状が落ち着いてから復職を検討します。

ステップ2「主治医による職場復帰可能の判断」


病状が安定したら、主治医が職場復帰が可能かどうかを判断します。その判断基準は「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」では以下のように記載されています。

  • 労働者が十分な意欲を示している

  • 通勤時間帯に一人で安全に通勤ができる

  • 決まった勤務日、時間に就労が継続して可能である

  • 業務に必要な作業ができる

  • 作業による疲労が翌日までに十分回復する

  • 適切な睡眠覚醒リズムが整っている、昼間に眠気がない

  • 業務遂行に必要な注意力・集中力が回復している

この際に、薬の副作用についても考える必要があります。例えば、ベンゾジアゼピン(抗不安薬、睡眠薬など)を内服している場合は、昼間の眠気や集中力の低下、忘れっぽくなるなどの副作用があり、仕事に影響を及ぼす可能性があります。副作用について、患者さんから主治医に伝えないと理解してもらえないこともあります。そうならないためにも、日頃から主治医と副作用について相談しておきましょう。


また、職場復帰の準備段階(リハビリ)として下記のような方法があります。

  • 模擬出勤:会社近くの喫茶店や図書館などで一定時間過ごしたり、本を読んだりなど模擬的な軽作業を行います。仕事の真似事のようなものです。

  • 通勤訓練:自宅から職場近くまで通勤する練習をします。まずは短い区間だけ電車に乗ってみるなど、徐々に段階的に行うのがコツです。

  • 試し出勤:職場に一定期間継続して出勤します。初めのうちは、特に何もせずに帰宅しても大丈夫です。

こうした方法を経て、症状のぶり返し(再燃・再発)が起きなければ、職場への復帰が可能と判断できます。その際は、主治医に職場復帰が可能な旨の診断書を発行してもらい、職場に提出します。


ステップ3-「職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成」


主治医が職場復帰が可能と判断したら、職場の人間や産業医らと話し合い、復帰に向けての具体的なプラン・スケジュールを決めます。まずは、休職中の人間の状態や気持ち、主治医や産業医の意見、現在の職場環境などについて情報を共有します。再び過酷な状況で働くようなら、すぐに再発してしまいますから、現在の職場にどれだけ支援する体制があるのかも大事な点です。ストレスの少ない労働環境が作れるのか、業務量や労働時間は適切か、困ったときに相談する窓口はあるのかなどを確認しましょう。基本的に、復帰後しばらくは今までよりも負担を軽くしてもらう必要があります。時短勤務、残業禁止などの措置についても話し合いましょう(もしも、どうしても今の職場が支援する体制を作れないのであれば、転職を検討した方が良い場合もあります)。


情報が集まった段階で、いつから、どのように復帰していくのかを決めます。具体的には厚生労働省の手引きから抜粋します。

  • 職場復帰日

  • 管理監督者による就業上の配慮(業務サポートの内容や方法、業務内容や業務量の変更、段階的な就業上の配慮、治療上必要な配慮など)

  • 人事労務管理上の対応等(配置転換や異動の必要性、勤務制度変更の可否及び必要性)

  • 産業医等による医学的見地からみた意見(安全配慮義務に関する助言、職場復帰支援に関する意見)

  • フォローアップ(管理監督者や産業保健スタッフ等によるフォローアップの方法、就業制限等の見直しを行うタイミング、全ての就業上の配慮や医学的観察が不要となる時期についての見通し)

  • その他(労働者が自ら責任を持って行うべき事項、試し出勤制度の利用、事業場外資源の利用)

復職のスケジュールが整えば、ステップ4で事業者が職場復帰について最終的な判断を行います。


また、精神疾患は再発のリスクもあるため、復帰後も適切にフォローアップしていく必要があります。これがステップ5です。通常は、復帰後もしばらく通院を継続する必要がありますので、通院をサポートする体制も必要です。また、過剰なストレスや負担が発生しない職場づくりも大切になります。


職場で休職者の復帰を支援するには


続いて、職場側がさらに知っておいた方が良いことを、海外のプログラムを参考にして説明します。


まずは、知識・情報が大切です。同じ職場で働く方々も、精神疾患について知ることから始めてみましょう。

精神疾患を理解するために、生物・心理・社会モデルという考え方があります。これは、精神疾患の原因を生物学的要因心理学的要因社会的要因に分けて考える手法です。

例えば、残業が多いとか、職場環境が悪いといったことは社会的要因です。ただ、他にも社会的要因はあります。家庭環境の問題で、夫婦仲が悪いとか、親子関係のトラブルという場合もあるでしょう。介護が関係する可能性もあります。介護負担による離職、いわゆる介護離職は社会問題化しています。

心理学的要因には、本人の価値観や性格的な要因、知的な能力などがあります。心理学的要因は社会的要因に関係が深いため、両者をまとめて心理社会的要因とする言い方もあります。

生物学的要因には、例えば遺伝的、先天的な要因があります。統合失調症や双極性障害、発達障害などは遺伝的、先天的な要因が強い精神疾患です。また、悪性腫瘍・癌、心疾患などの身体疾患は、精神疾患と密接に関係します。ホルモンの病気や免疫の病気、脳の病気などが精神疾患を直接的に引き起こすこともあります。

精神疾患について理解するには、原因を一つに決めつけず広い視野で考えることが大事なのです。

次に、どのような心構えで休職者に対応するのかも説明します。


オーストラリアには、”RESPECT Manager Mental Health Training RESPECT Manager Mental Health Training”というマニュアルがあります。これは、会社の上司、管理職などマネージャーレベルの役職の人に向けたプログラムで、休職した職員への対応が書かれています。

このプログラムでは、職場の上司は、病気について基礎的な説明を受けた後、休職した職員とのコミュニケーションの方法を学びます。コミュニケーションでは7つのポイントを説明するのですが、それぞれの頭文字をとってRESPECTと語呂合わせを作っています。以下に、本文からの抜粋を私の意訳を添えて記載します。

  • "Regular contact is essential."(定期的な連絡が必要)

  • "Earlier the better."(連絡を取るなら早くした方が良い)

  • "Supportive and empathetic communication."(優しく支えるような、かつ、思いやりをもったコミュニケーションを心がける)

  • "Practical help, not psychotherapy."(専門的な心理カウンセリングじゃなく、現実的な援助が大事)

  • "Encourage help-seeking."(専門家(医師、心理士など)に相談することを勧める)

  • "Consider Return to Work options."(職場に復帰するという選択肢について一緒に考える)

  • "Tell them the door is always open and arrange next contact."(いつでも戻ってきて良いことを伝え、次のアポイントメントを取る)

このRESPECTは、決して専門的ではなく、誰でも可能な方法だと思います。オーストラリアでは、実際にこのプログラムを運用したところ、職場の休職者が減るなどの良い効果が得られたという研究結果があるそうです。

復職は本人だけの努力に任せてもうまくいきません。職場環境の調整や、上司、同僚の理解・サポート・コミュニケーションが必要になります。上記のプログラムを参考に、周囲の方も考えてみてください。


よりどころメンタルクリニック

横浜駅西口 心療内科・精神科

参考文献・サイト:


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