抗うつ薬の眠気ランキング



今回はうつ病の治療薬(抗うつ薬)の眠気について扱います。


うつ病になった場合、軽症なら休養や心理療法だけで治療することもありますが、ある程度の病状になれば薬物療法を行うことになります。


うつ病の治療薬には色々とあり、全てまとめて抗うつ薬と呼びます。抗うつ薬は、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬などのカテゴリーに分類されます。ただし、ミルタザピンなど各カテゴリーに入りにくい特徴の薬もあります。


どの抗うつ薬も、統計的に調べると、うつ病の治療効果はほぼ同じくらいです。ただし、副作用については各薬によって差があります。薬は人によって合う合わないがあるので、うつ病の薬を始めてみて、副作用が強いとか効果が弱いなどの問題があれば、その薬はその人には合わないと考えて他の抗うつ薬に変えます。


抗うつ薬には色々な副作用がありますが、今回は日中の眠気について特集したいと思います。働いている人、車やバイクを運転する人にとって、昼間の眠気は重大な副作用です。昼間に眠いと仕事がはかどらないでしょうし、運転者にとっては居眠り運転に繋がる危険性もあります。


精神科の薬の副作用の中で、日中の眠気は比較的多いものです。ただし、確率の問題ですから、向精神薬を使っても日中に全く眠くならない人もいますし、少しの量で強い眠気を感じる人もいます。副作用の出方は個人差が大きいのです。


抗うつ薬にも眠気の副作用があります。ただし、日中の眠気の出る確率は薬によって大きく異なります。ここでは、2004-2019年のアメリカの市販後調査の報告を元に、30種類の抗うつ薬と日中の眠気の関連性を調べた論文を引用したいと思います。


Eugene AR. Association of sleep among 30 antidepressants: a population-wide adverse drug reaction study, 2004–2019. PeerJ. 2020.


ここではオッズ比という数字を使って、抗うつ薬と日中の眠気の出やすさを調べています。オッズ比は感覚的に捉えにくい数字です。ですから、オッズ比のランキング形式にまとめました。


以下、眠気が出やすい順に「抗うつ薬の名前(先発品名):種類:日中の眠気のオッズ比」を列挙していきます。なお、論文中の抗うつ薬の中で、日本で使われていないものは抜いてあります。


  1. アモキサピン(アモキサン):三環系抗うつ薬:7.1

  2. マプロチリン(ルジオミール):四環系抗うつ薬:6.3

  3. ミアンセリン(テトラミド):四環系抗うつ薬:5.9

  4. クロミプラミン(アナフラニール):三環系抗うつ薬:4.2

  5. フルボキサミン(ルボックス、デプロメール):SSRI:4.1

  6. イミプラミン(トフラニール):三環系抗うつ薬:3.6

  7. ミルタザピン(リフレックス、レメロン):NaSSa(四環系抗うつ薬に類似):3.6

  8. エスシタロプラム(レクサプロ):SSRI:3.2

  9. ノルトリプチリン(ノリトレン):三環系抗うつ薬:3.1

  10. パロキセチン(パキシル):SSRI:3.1

  11. ベンラファキシン(イフェクサー):SNRI:3.1

  12. デュロキセチン(サインバルタ):SNRI:3.0

  13. トラゾドン(レスリン):SARI:2.8 ※眠気の強い抗うつ薬ですが、この位置にあるのは眠前だけに飲むことが多いからと思います。効果は短いので、眠前に飲めば翌日に眠気が持ち越すことは少ないと解釈できます。

  14. アミトリプチリン(トリプタノール):三環系抗うつ薬:2.8 ※こちらもトラゾドン同様です。

  15. セルトラリン(ジェイゾロフト):SSRI:2.6

  16. ミルナシプラン(トレドミン):SNRI:2.1

  17. ボルチオキセチン(トリンテリックス):セロトニン受容体調節薬:1.3


使用報告に基づいて作成しているので、若干薬理作用と乖離している所もあります。例えば、トラゾドンは眠気が強いため、眠前に睡眠薬代わりに使われています。ただ、眠前だけに飲む場合は、日中の眠気に関連しにくいため、眠気が少ないような位置づけになっています。


このように使われ方の影響はあるものの、抗うつ薬を使用する上では参考になるランキングと思います。使用中の抗うつ薬で日中の眠気が強いと感じる場合は、より眠気の少ない抗うつ薬に変更する方法もあります。是非ご検討下さい。

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