不安・緊張・恐怖の対処法



ここでは、認知行動療法に沿った方法で、薬を使わずに不安・緊張・恐怖を解消する方法について紹介します。うつ病、パニック障害、社交不安障害、統合失調症など、不安症状が強まる精神疾患は沢山ありますが、今回紹介する方法はどの精神疾患でも役立ちます。


なお、薬を使わなくても精神疾患が治るわけではないので、そこは誤解しないようお願いします。ある程度、精神症状が強くなった場合は、薬物療法が必要です。ただし、たとえ薬を使って治療したとしても、今回紹介する方法も同時に行うと効果的です。ぜひ試してみて下さい。


ステップ1:不安・緊張・恐怖とは何か


不安・緊張・恐怖は誰にでもある自然な感情で、人間にとって必要なものです。不安感や恐怖感があるからこそ、人間は危険を回避します。言い換えれば、こうした感情は私たちが身を守るための能力なのです(さらに言えば、人間だけではなく、動物にとっても必要な感情です)。


ただし、特に危険な状況ではないのに不安になったり、理由もなく恐怖に襲われては困ります。いくら必要な感情とはいえ、不合理な不安・緊張・恐怖は邪魔なわけです。


また、不安・緊張・恐怖といった感情があまりに強すぎると、体調が悪くなったり、電車に乗れなくなったり、人に会えなくなったりします。これでは生活に支障をきたします。


つまり、不安・緊張・恐怖は私たちの身を守るために必要な感情だけれども、あまりに不合理だったり、強すぎたりすると良くないということです。したがって、私たちは不安・緊張・恐怖を完全に取り除こうと頑張る必要はなく、不合理にならないようにコントロールしたり、強くなりすぎないようコントロールすれば良いのです。不安を消すのではなく調整すると考えて下さい。


ステップ2:不安・緊張・恐怖による自律神経症状


危険が迫ると不安・緊張・恐怖が高まり、私たちの身体は臨戦態勢に入ります。すると、身体は様々な反応を示します。例えば、心臓の鼓動が早くなったり、血圧が上がったり、呼吸の回数が増えたりします。これは私たちの中にある自律神経の働きであり、自然な現象です。自律神経には交感神経と副交感神経がありますが、不安・緊張・恐怖が強まると、主に交感神経が活発に働き、脈拍・血圧の上昇、呼吸器症状などを引き起こします。


しかし、時に、危険な状況でもないのに身体が不安や恐怖の反応を示すことがあります。例えば、人ごみに入るだけで動悸がしたり、息が苦しくなったりします。これも自律神経の働きですが、自律神経自体が悪いわけではありません。あくまで強い不安感や恐怖感が原因です。


不安が自律神経に作用して引き起こす症状で、有名なものがパニック発作です。パニック発作では、急に動悸、呼吸困難、冷や汗などが出ます。パニック発作が来ると、死んでしまうのではないか、気が狂うのではないかと怖くなる人も多いですが、そんなことはありません。パニック発作は、多くの場合5~10分でおさまります。別に身体に異常があるわけではないので、誤解しないことが大事です。


例えば、心臓が悪いのではないかと考えてしまうと、余計に心臓の鼓動が強く感じられ、不安は強まり、さらに鼓動が早まります。これでは悪循環です。不安による身体の反応は、特に危険なものではなく、また、永久に続くものでもないことを知っておきましょう。


自律神経失調症という言い方もありますが、これも多くの場合は不安・緊張・恐怖などの自律神経症状を指します。自律神経そのものが悪いのではなく、感情の問題なのだと理解することが、自律神経失調症の治療の一歩目になります。


ステップ3:不安を軽くするための方法


不安を完全に無くす必要はありませんが、あまりに不安が強いと困ってしまうので、軽くする方法を知っておくことが大切です。いくつかご紹介します。


  • 深呼吸:鼻からゆっくりと息を吸い、息をいっぱいに吸い込んだら、息を吸う時よりもさらにゆっくりと息を吐きます。不安になると呼吸が早くなりますが、あまりに呼吸が早くなるとめまいや手足の痺れを引き起こします。無理に呼吸を止める必要はありませんので、ゆっくりと呼吸してみましょう。

  • 筋肉の力を抜く:不安や緊張が高まると、無意識のうちに力が入っています。手足の力を抜いてリラックスしてみましょう。深呼吸をしながら、息を吐くときに力を抜くのも良い方法です。

  • リラクゼーション:静かな音楽を聴く、本や雑誌を眺める、温かい飲み物を飲む、お風呂につかるなど、自分なりの方法でリラックスできることを見つけてみましょう。

  • 運動・エクササイズ:運動・エクササイズには不安症状やうつ症状を改善する効果があるという科学的・医学的なデータがあります。散歩、ジョギングなどの有酸素運動は身体の健康にも心の健康にも良いものです。まずは軽い運動から始めてみてください。

  • 行動する:問題があると、あれこれと考えて不安になるけれども、問題の解決に向けて動くことはしない。そんな人は多いものです。しかし、それではいつまでも問題は無くならず、ずっと不安が続くことになります。ずっと心配し続けるよりも、対処法を探して行動を起こす方が、結果として不安が解消されることもあります。悩むよりも行動することが、心理的にプラスに働くこともあるのです。


ステップ4:現実的に考える


思い込みや偏った考え方により、不安・緊張・恐怖が強くなる場合があります。誰にでも多少の思い込みや偏った考え方があるものですが、普段はそれに無自覚です。例えば、もう永久に自分は不幸のままだとか、すべての人間が自分のことを悪く思っているなどと思い込むこともあるかもしれません。しかし、冷静に考えれば、今が辛くてもそれが永久に続くとは限りませんし、自分を嫌う人間がいたとしても世界中すべての人間から嫌われる可能性は低いはずです。


このように、後で冷静になって振り返ると、そこまで悪く考えなくてもよかったと思えることがあります。是非、時間を作って過去の考え方を振り返ってみましょう。


考え方は感情を左右します。実際よりも悪く考えると、余計に辛くなったり、不安になったりします。偏った考え方を現実的な考え方に変えれば、辛い感情や不安が軽くなります。考え方を大きく変えるのではなく、少し見直すだけでも感情は変わります。まずは、自分の中に思い込みや偏見、偏った考え方がどれだけあるのかを見つけてみましょう。


自分自身に尋ねてみると、自分の考え方を発見できます。以下の質問を自分自身に投げかけてみて下さい。


  • 私はどのような状況で、どのように考えているのだろう?

  • 考え事の後に出てくる感情はどのようなものだろう?

  • 私の考え方は、事実に基づく現実的な考え方だった?

  • 私が悪く考えていたことは、本当にそれだけ悪いことだった?

  • 私が心配していたことは、本当に100%の確率で確実に起こることだった?

  • 本当に悪いことが起こったとしても、それは解決不可能な問題だった?


このような自問自答により、自分の中にある考え方を自覚し、感情をコントロールすることができます。ただし、全ての考え方を変える必要はありませんし、極端に考え方を変える必要もありません。どんな考え方にも良い点があります。自分の考え方の悪い部分だけを探すのではなく、良い点、メリットも探してみましょう。


ステップ5:不安・緊張・恐怖に向き合う


ある程度、不安・緊張・恐怖がコントロールできてきたら、今度は自分から向き合ってみましょう。不安なこと、怖いことは、つい避けてしまうものです。しかし、ずっと避けていては克服することはできません。克服するには小さな練習を積み重ねることが大事です。


例えば、電車に乗ると不安、恐怖が襲ってくる場合は、あえて電車に乗る練習をしてみます。まずは一駅区間だけ乗ってみるなど、最初は小さな目標にして、それが達成できたら次の目標にうつります。いっきにハードルを上げるのではなくて、段階的に課題を設定して、一つずつ達成していきます。特に初めは簡単なことから挑戦してみましょう。そして、焦らずゆっくりと、ハードルを上げてみて下さい。



このように不安・緊張・恐怖に向き合い、小さな練習を繰り返しながら克服する治療を暴露療法と呼びます。不安・緊張・恐怖に暴露する(さらされる)という意味です。不安・緊張・恐怖の認知行動療法では、こうした暴露療法もセットで行います。


ステップ6:自信をつける


不安・緊張・恐怖を減らすには、自信をもつことも大切です。目標を達成したら、自分を認め、自分をほめてください。また、今まで自分がやってきた努力を思い出しましょう。紙に過去の努力を書き出しても良いです。また、こうした努力によって不安・緊張・恐怖といった感情がどれだけ減ったのかも考えてください。自分が出した成果に気づかないのは、とてももったいないことです。自分がどれだけ頑張ってきたのかを理解し、自信をつけましょう。



不安感の対処法の説明は以上です。精神科や心療内科の治療は薬物療法が主体ですが、薬以外の治療法も沢山あることがお分かり頂けたら幸いです。

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