うつ病の予後を予測する

うつ病が良くなるかどうかには、症状の種類や程度だけでなく、仕事の有無や子供の頃の辛い思い出なども関係するそうです。最新の研究結果をご紹介します。


世の中には色々な精神疾患があります。長く生きていれば、どれか1つくらい関係することはあるでしょう。自分が精神疾患になる可能性もありますし、身近な人が精神疾患になる可能性もあります。


その中で、うつ病は比較的多い精神疾患です。普通は嫌なことがあって落ち込んだり、眠れなくなったり、食事が喉を通らなくなったりしても、数日から数週間である程度は立ち直ります。しかし、時にこうした症状が長引き、数週間から数ヶ月も続くことがあります。こうなると、うつ病と診断されます。


うつ病はなかなか治りにくい病気で、薬の治療を始めても半分以上の人は何ヶ月も症状が続きます。なかなか治りにくい場合、他の薬に変えたり、他の薬を加えたりすることで、効果を増やす方法を取ります。


そこで、あらかじめ治りにくいかどうかを予測しておくと、次なる治療の方法を考えやすいのではないかという仮説が立てられ、検証する研究が行われました。


この研究では、1,522人の人たちが参加しました。皆さんがうつ病の患者さんで、抗うつ薬による治療を受けたものの十分に改善しなかった人になります。この方々は、次の治療として以下の3種類のどれかを試します。


  1. 現在使用中の抗うつ薬を中止して、ブプロピオン(海外で使用される抗うつ薬で日本では未発売)を使う。

  2. 現在使用中の抗うつ薬に加えて、ブプロピオンを使う。

  3. 現在使用中の抗うつ薬に加えて、アリピプラゾール(日本でも抗うつ薬と一緒に使うことがあります)を使う。


要は、薬を変えるか、加えるかという選択肢です。どの治療にするかはランダムに決まります。

12週間治療を続け、結果が調査されました。まずは、どういう人たちが良くなったのかをお伝えします。


病状が十分に改善した人たちに見られた傾向は、働いている方、症状が軽度で長引いていない(慢性化していない)方、不安が少ない方、身近な人が亡くなった悲しみ(死別反応)がない方、子供のころに辛い体験(虐待など)を経験していない方などです。


逆に言うと、働いていない方、症状が重くて長引いている方、不安が強い方、身近な人が亡くなった方、子供時代に辛い経験がある方は治りにくかったということです。


症状だけでなく、職業や生育環境などの社会的要因も関係してくることが大事な点です。このため、当クリニックでも子供の頃や現在の生活環境などをお尋ねし、病状を評価することがあります。


また、65歳以上の方はアリピプラゾールを追加する治療が良かった、軽躁状態とうつ病の症状が混じっている方は、ブプロピオンの追加かアリピプラゾールの追加が良かったという傾向も見られました。軽躁状態とは、気分が明るくなったり、活動的になったりする症状で、双極性障害という病気と関係が深いものです。


このように、治療の予後を予測したり、どの治療が良いか考えたりするためには、様々な要素を複合的に考えなければなりません。精神科の診察時間が長いのは、色々な項目を評価するのに時間がかかるというのも理由の一つなのです。


引用文献:Zisook S, et al. General Predictors and Moderators of Depression Remission: A VAST-D Report. Am J Psychiatry. 2019.


よりどころメンタルクリニック

横浜駅西口 心療内科・精神科

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