脳を刺激してうつ病を直す方法


今回はうつ病の治療法について話します。


うつ病は軽症ですと休養や心理カウンセリングなどで治る可能性があり、薬を使わないでも治療可能です。しかし、ある程度症状が強くなると、こうした治療だけでは改善が難しくなるため、薬を使って治療するのが一般的です。うつ病の治療薬を抗うつ薬と呼びます。


精神科医の中には、薬を使わない治療が良いと宣言する人もいますが、一般的には症状に応じて抗うつ薬を使います。抗うつ薬の効果と安全性は科学的に認められており、世界中で抗うつ薬を使った治療が標準と考えられています。


しかし、うつ病の患者さんの中には、抗うつ薬では良くならない方が存在します。その場合、抗うつ薬を変えるか、他の薬を組み合わせる等の選択肢がありますが、脳を直に刺激する治療、という選択肢もあります。


2016年に、脳神経を刺激する治療をいくつか比較した論文が出ました。これは、効果や副作用、安全性を考慮して、治療法に順位付けしています。


Milev et al. Canadian Network for Mood and Anxiety Treatments (CANMAT) 2016 Clinical Guidelines for the Management of Adults with Major Depressive Disorder: Section 4. Neurostimulation Treatments. Can J Psychiatry. 2016.


この論文によれば、抗うつ薬が効かなかった場合に、TMSという治療法が最初に推奨され、次にECTという治療が推奨されています。


TMSとは、Transcranial Magnetic Stimulationの略語で、経頭蓋磁気刺激と邦訳されます。これは脳に強力な磁力を当てる治療です。TMSのうつ病に対する効果は、改善率(治療反応率)が40~55%なので、概ね5割程度です。寛解率(ほぼ症状が消失する確率)は25~35%なので、概ね3割程度ですね。最近は、もっと有効性が高いとする論文もあります。


TMSは副作用が少ないというメリットがあり、入院しなくても、外来通院で実施できます。週5回のTMSを4週間続けるというのが一般的な方法で、最大6週まで延長できます。週5回通院するのは大変かもれしれませんが、入院するよりは自宅から通って治療する方が良いと考える人も多いようです。


ECTは、Electroconvulsive Therapyの略語で、電気けいれん療法と邦訳されます。これは脳に電気を流して、人工的にてんかん(けいれん)を起こす治療です。ECTのうつ病に対する効果は、改善率(治療反応率)が7-8割、寛解率が4-5割であり、有効性はTMS以上です。しかし、痛みを防ぐために全身麻酔しなければならず、基本的には入院が必要になります。大がかりな治療ですから、TMSの方がハードルが低いと言えるでしょう。


このように、うつ病の治療では、たとえ抗うつ薬が効かなかったとしても、TMSやECTといった、次なる選択肢がありますので、絶望することはありません。


なお、TMSについては、現段階では抗うつ薬の効果が乏しかった場合に行う治療、という位置づけです。あくまで2番目の選択肢、プランBですから、最初からいきなりTMSで治療するわけではありません。最初の治療は、基本的に抗うつ薬、軽症の場合のみ、休養や心理カウンセリングと考えて下さい。

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