辛いことに耐えられない遺伝子

遺伝子と子供の辛い養育環境が組み合わさることで、その後の人となりが決まる可能性について研究論文を引用して語ります。

遺伝子は私たちの中にある設計図みたいなもので、私たちを形作っています。


ただ、遺伝子だけで何もかも決まるわけではありません。生まれてから今まで、どんな環境で育ってきたかということも大事です。


人間の内側にある遺伝子と外側にある環境、という二項対立はよく語られる話なのですが、今回はその間の架け橋みたいな研究論文をご紹介します。


人間は周囲の状況に反応しながら生きています。その反応の仕方は人それぞれです。


例えば、お化け屋敷に入った時、突然出てきたお化けに対して驚愕し叫び声をあげる人もいれば、静かに怖がる人もいて、お化けが出てきてもそんなに反応しない鈍感な人もいます。


ようは、お化け屋敷という環境に対して、人によって様々な反応があるわけです。


今回は、こうした周囲の環境に対する反応性が遺伝子で決まるのではないかということを調べた研究を紹介します。


この研究で調べられた遺伝子はFKBP5というものです。FKBP5はコルチゾールというストレスに関係するホルモンの感受性を制御する遺伝子で、ストレス性疾患と関係していると言われています。遺伝子は組み合わせによっていくつかのタイプに分かれますが、この遺伝子型がストレスへの反応に関わっているのではないかという仮説が調べられました。


ここでは、910人の子供の遺伝子(FKBP5)と養育環境が調べられました。養育環境とは、2歳までに家庭内暴力にあったことがあるかどうかということです。幼少期の家庭内暴力や虐待は、その後の人生に大きく影響するので、大事な話です。


そして、子供たちのストレスに対する感情的な反応、ストレスに対するホルモンの反応、情緒の問題、能力や学校の成績なども、数年にわたり追跡調査されました。


この結果、FKBP5という遺伝子の特定の組み合わせがあり、なおかつ家庭内暴力に遭遇してしまった子供は、ストレスに対してホルモンのレベルで反応しやすいという結果が出ました。また、そういう子供は、その後に知能が低くなったり、成績が悪くなりやすく、情緒的な問題も抱えやすいことが分かりました。


これは、虐待の問題を考える時にも役立ちますよね。同じような虐待にあった子供でも、とある遺伝子があると悪い影響が出やすくなってしまう。逆に言えば、遺伝子的に、虐待にあっても悪い影響が出にくい子供もいるということでしょう。


この研究結果は、遺伝子と養育環境の組み合わせが、その後の人生を変えるという考え方に繋がります。


人間は生まれながらにストレスに強い人もいれば、弱い人もいます。こうした研究が、それを明らかにしてくれます。


もちろん、虐待なんか無くなるのか良いのは言うまでもありません。


引用文献:Halldorsdottir T, et al. Neurobiology of Self-Regulation: Longitudinal Influence of FKBP5 and Intimate Partner Violence on Emotional and Cognitive Development in Childhood. Am J Psychiatry. 2019.

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